恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎
〜無一郎の誕生日をお祝い〜
八月になった。一般的に「真夏」と呼ばれる時季。
僕はこの季節が嫌いだ。理由は二つある。
一つは暑さ。八月の平均気温は二十五度前後の日が多いんだって。
これはお館様から以前の柱合会議で教えて貰った。
昼の暑さは元々人が起きている時間だし、隊服の機能の良さもあって何とか耐えれる。僕が問題視しているのは夜間の話。
「霞柱様、今夜は熱帯夜になるそうです。お気をつけて任務されて下さい」
「えっ? 夜も二十五度超えるの? 嫌だなあ」
玄関の上がり框(かまち)に腰掛け、草履をはいている時に後ろから声がかかる。
この人は僕の屋敷専用の隠で、名前はえっと確か……。
「本田さん、それ本当ですか?? 」
ああ、そう。本田さんだっけ。
因みに彼女に話しかけたのは僕の継子であり、恋人でもある七瀬。二つ上だけど、色々危なかっしくて時々年下に見えたりもする女の子だ。
揶揄(からか)うと面白いし、退屈しないんだよね。
「はい、熱帯夜ですって。昼間の二十五度と夜の二十五度は体感温度が違いますよね」
あ、僕が考えている事丁度言ってくれた。本田さんって七瀬とあまり年は変わらないって聞いたけど、随分しっかりしている。
まあ七瀬が抜けすぎてるから、彼女が普通なのかもしれないけど……。
「無一郎くんは今日の見回り、銀座だよね。いいなー銀座! 私一度しか行った事ないよ」
「君さあ、僕は遊びに行くわけじゃないんだよ。それ言うなら七瀬だって麻布の見回りでしょ」
「ふふ、そうでした」
全く…
こう言う所が危なっかしいんだよ、君は。霞柱の継子なんだから、そのあたりきちんと自覚持ってよね。
「はいはい〜お二人の仲の良さはもう充分わかってますから、そろそろ出かけて下さいませ」