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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎



「ムーン? 」

………!! まずい、禰󠄀豆子が目を覚ましたか…!
あわあわし始めた俺と同様、七瀬は慌てて寝衣を纏って髪をいじり出した。


「………」

「………」


静まり返っているこの空間はなかなか気まずい。禰󠄀豆子の様子を見るか…。
俺は寝衣に帯をまきつけると、壁側にピタリとくっつけるようにして置いた背負い箱の蓋をそうっと開ける。


「何だ、寝言か……」

妹は胎児のように体を折りたたみ、すやすやと眠っていた。そういえば人間だった時も眠りが深くて、途中で起きる事はなかったっけ。


「かわいい寝顔だね。炭治郎とやっぱり似てる」

「そうかな?」

「うん、目から鼻のあたりはそっくりだと思うよ」

「そっか」


おやすみ、と二人でこっそりと声をかけ、パタンと静かに扉を閉めると何だか急に気恥ずかしくなって、顔の表面温度が上がる。


「あの、さ。私も焦ってたから…今になって冷静に考える余裕が出て来たんだけど。鬼になってるとは言え、禰󠄀豆子の前でそう言う事するのは…まずいよね」

「あ、うん。いや、でも、そうか…うーん」


再び俺と彼女の間に訪れる沈黙。霧雲杉の箱の中からは穏やかな寝息が変わらずに聞こえて来る。

七瀬の言う事は正論だ。でもせっかくの誕生日を好きな子と過ごせる機会なんてこの先ないかもしれない。
俺達は生と死が常に隣り合わせの鬼狩りなのだから。


「七瀬の言う事は正しい意見だと思う。でも俺は…君と心だけじゃなくて、体も繋げて深い仲になりたいんだ。今日が誕生日じゃなかったら多分こんな風に思わない。一年に一回の日に大好きな子と過ごせるってすごく貴重な事だと思うんだ」


「炭治郎……いいの? 」

うん、と俺は力強く彼女に向かって頷いた。禰󠄀豆子、ごめんな。今日だけはわがまま言わせてくれ……!!


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