恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎
「しないよ」
「んっ……」
顔に当たっていた月光。
それをふっと遮ったのは雲ではなく、恋人の顔だった。ほんのりとあたたかい口付けが一回、俺の唇に届けられた。
ふう、と彼女の息が漏れると反応するのは下半身に集中している強い熱だ。
体が震えた。七瀬を俺、求めているんだ……。
「私、あなたの事大好きなんだよ。がっかりなんかしない。それに私が初めてって言うのが凄く嬉しい」
「だって…初めてだぞ? 面倒じゃないか?」
「炭治郎、それ以上言うと怒るよ」
え、それは嫌だな……。
途端にシュンとなってしまう自分を見た彼女がフッと笑う。そしてそっと両手で顔を包みこんでくれた。
「ちっちゃい顔だね〜。羨ましい」
「そう、かな」
「うん、私の手におさまっちゃうもん」
七瀬の顔がゆっくり近づき、また唇同士が合わさる。ち、ちうと小さな鳥がさえずるような口付けだ。
「炭治郎、口あけれる?」
「ん、はあ……こうか?」
僅かに開けた口の隙間。そこにぬるっとした物が入って来てびっくりしてしまった。七瀬が自分の舌を侵入させて来たからだ。
「息、ちゃんと…はぁ……してね」
「あ、ああ……んっ」
上の歯列、下の歯列がゆっくりと尖った舌でなぞられていく。初めてだけど、とても気持ちよかった。
七瀬が丁寧に愛撫してくれたからかな。
「ふう、一旦おしまい。あっち行こうよ」
「うん、わかった」
彼女にまさぐられていた口腔内が熱い。月明かりが入る窓を離れ、俺達は敷かれている布団に移動した。二人でゆっくり座ると、七瀬はごろんと横になる。
「今度は炭治郎が口付けてくれる?」
上から彼女に覆い被さると、自分の首に細い両手がそうっと回った。