恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎
七瀬の好きな人は、十中八九時透くんと思い込んでいた為、勘違いしていた事も恥ずかしくはあった。
けど恥ずかしさ以上に自分の好きな子が、自分の事を好きでいてくれた事実が本当に嬉しい。
気がつくとかなり酷かった雷が少し落ち着いていた。
雨の音も殆ど聞こえなくなったので、もしかしたら止んだのかもしれない。
「雨戸あけるか? もう大丈夫だと思うぞ」
「う、うん。そうだね、閉めていると暑いもんね」
こう問いかけたのは、彼女に気持ちを伝えた照れを隠す為もある。
俺と七瀬は二人で先程閉めた雨戸を開けると、ガラス窓から見える夜の様子にわあ……と声をあげてしまった。
「今夜って満月だったんだ」
「だなあ、俺も気づかなかった」
そこには空高く輝くまあるい月。周囲には夏の夜空を彩る星達がキラキラと光っている。
「今日も夏の大三角見つけた」
「ふふ、覚えてくれたんだ。嬉しいー」
だってこれは大好きな君が教えてくれた事だ。そして自分が生まれた時期に起こる現象でもある。
「炭治郎、誕生日おめでとう。今日だよね」
「うん、ありがとう……俺も覚えててくれて凄く嬉しい」
「好きな人が生まれた大切な一日だもん。実はね、今日会えないかなってずっと考えてたの、朝から。だからこうして会えて凄く嬉しかった ——— 」
七瀬の頬に口付けを一度贈り、それから彼女の唇にも触れるだけのそれを一度贈った。
ゆっくり顔を離すと、月明かりに照らされた七瀬の恥ずかしそうな顔がそこにある。
「その…そう言うかわいい事言われると、したくなった」
「びっくりしたよ…もうー」
掌を唇に当てて、二つの瞳を丸くする彼女が愛おしい。
「ねえねえ」
「ん? どうした? 」