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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎



「そう? じゃあ一緒に行こうよ」

「…! ああ! 」

ほんの一瞬とは言え、彼女と一緒に湯浴みをするんだ!……と勘違いしてしまった。ダメだな、俺。突然の出来事にかなり動揺してるし、考えが何かこう……変な方向にいってしまう。


「着いたー! 私、こっちだからまた後で」

「うん……」

左側に男湯・右側に女湯と、それぞれ書かれた藤色の暖簾。七瀬はそこをくぐりながら、ひらひらと俺に手を振る。

はあ、とため息を一つつく。
驚く程いつも通りの彼女。俺だけがこんなに焦っているのが滑稽に思えて来た。

その後も女湯側から「お湯気持ちいいねー!」と大きな声で呼びかける彼女に、ますます混乱させられる俺だ。


「藤の家の浴室っていつも気持ち良いんだけど、ここは特に良い気がしたよ。何でだろうね?」

「あ、ああ。どこの家も確かに気持ち良いよなー。確かにここは俺も特に良いなって思ったよ」

「炭治郎もそう思った? やっぱりそうだよねー」


……気持ち良いって言うより、俺は七瀬が隣の浴室にいるんだって思うと、鼓動が高まるし、速まるし、のぼせそうになった。
これが正直な思いだ。

今だって自分の隣を歩く彼女を見て、胸がドキドキしている。
風呂上がりでほんのりと赤くなった頬に、半渇きの髪。

ちょうど真ん中の位置で団子にまとめているから、いつもは隠れているうなじが丸見えだ。
風呂場から自分達の部屋までは歩いて五分もかからない距離。だからすぐに部屋に着いた。


「この大きな手拭い、”たおる”って言うんだって。手拭いより水分を吸ってくれるから、半分は乾いたよ」


襖を開き、肩にかけていた”たおる”で髪を押さえている七瀬がとてもかわいい。
……抱きしめたいな。そんな事を思うけど、俺達はまだ恋人でも何でもない。


そんな時だった ———


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