恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎
気分を切り替えて、次にライスオムレツを口に入れた。
……!
お店の物とは違う美味しさだ。
家庭の味って言えば良いのかな。美味しいのはもちろんなんだけど、もっとあたたかみを感じる気がする。
俺はそんな気持ちを七瀬と本田さんに伝えた。
すると ——
「良かったあ、そう言って貰えて。トルティージャは私が主に作ったんだ。より簡単だって聞いたからさ」
心底ほっとしたような、目尻を下げた表情。上手く伝える事が出来たみたいで俺も安心だ。
それからふふっと柔らかい笑顔をこぼす七瀬に、また心地よく胸の鼓動が跳ねる。
……やっぱり好きだな、七瀬の事。
恋慕の思いに浸っていると、隣から聞こえて来たのは「ごちそうさま」と食事を終えた時透くんの声だった。
「もう良いの? まだこれから甘味も出すよ」
「お館様から本部に来るようにって事なんだ。甘味は帰宅してから食べるよ」
「わかった、気をつけて行って来てね」
「うん、ありがとう」
霞柱はスッと立ち上がり、そのまま居間から退出して行った。
「あ……残したわけじゃなかったんだ」
「少食そうに見えるよね。でも自分が気に入った物は多く食べる性分みたいだよ。ふろふき大根は私達二人あんまり作るのが上手くなくてね、いつも残されてるんだ」
「はは、そうなんだな」
彼が食べた皿に視線をやれば、ライスオムレツもトルティージャも綺麗に姿を消していて、残っているのは一つの匙だけだ。
やっぱりこれ美味いよな。あ、そう言えばさっき甘味もあるって言ってたっけ。聞いてみよう。
それから十分後、俺の目の前にはぷるぷるとした黄色の菓子が鎮座していた。
「卵料理ばっかりでごめんね。炭治郎来るって言うから買いすぎちゃってさ」
「いや、それは大丈夫なんだけど……高かったんじゃないのか?」
問いただしてみると、柱の給金は本人が希望した額だけ支給されるのだ —— 目が飛び出してしまうような事を言われて、しゃっくりが出る時のように体がひくっと震えてしまった。