恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎
「いただきます!!!!」
居間に響く四人分の声。俺の対面側には本田さんが、時透くんの対面側には七瀬が座っている。
「ん〜、どっちも美味しい!」
「良かったです、上手く作る事が出来て。せっかくのお誕生日会ですからね」
女子二人は顔を見合わせ、心底ほっとしている。
ライスオムレツは食べた事があるから……今回はこっちから先に食べてみよう。
先程七瀬が人数分の皿に乗せてくれたとるてぃーじゃ。
突き匙(=フォーク)を持った右手で、くさび型に切られた卵生地の先端を少し取って口に入れた。
ふんわりとした卵と野菜が混ざったそれは甘くなく、塩の味が口内に広がって行く。
「うまい…何か疲れが取れる気がする」
「暑い時は水分だけじゃなくて、塩分も摂取するようにって胡蝶さんから聞いた事あるんだけど……こう言う意味なんだね」
俺が味付けに満足している横で、時透くんはとても理にかなった事を言った。
なるほどなー塩分か……。
「ふうん、この赤い米飯も美味しいね。けちゃっぷだっけ? 凄く好みの味」
「うん、私もケチャップの味好きなの。トマト好きにはたまらないんだ」
ドクン……! と心臓が跳ね上がった。
時透くんの柔らかい笑顔、嬉しそうに応える七瀬は何だか師範と継子以上の関係性に見える。
同時に胸の中に広がるのは少し濁った感情だ。
……七瀬の好きな人って、もしかして時透くん??
そんな予想が脳内に充満していくけど「炭治郎どうしたの?」と言う七瀬の声でハッとそれが中断した。
「ごめん。何でもないんだ! これ凄く美味くて……味をしっかり堪能してた所。 おかわりしたいぐらいだ」
俺は嘘をつくのがとても下手だ。
だから本当の事も半分混ぜたんだけど……やっぱり不自然だったよなあ。