恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎
「うわーこれライスオムレツか?」
「へえ、洋食? 初めて食べるかも」
十分後、俺と時透くんは隣あって座っていた。
俺達の目の前の座卓にそれぞれ並べられているのは、つい先日銀座で七瀬と食べに行ったライスオムレツだ。
楕円形の形をしたそれは、ふわふわとした卵生地で包まれている。
中身は確かケチャップライス…だったっけ。
それからもう一つ同じような卵料理が座卓の中央にドンと置かれている。こっちは丸い形だ。何だか満月を思わせる。
「炭治郎、気になるよね。こないだ食べた物と形が違うし」
「ああ、そうだな。ライスオムレツと違ってこっちは野菜と…ん? これはじゃがいもか? 肉? も生地に混ざってる?」
「うん、合ってるよ。じゃがいもと玉ねぎにほうれん草。それからベーコンって言う豚のばら肉を塩に漬けて、燻製(くんせい)にした物も入ってるんだ」
少し身を乗り出して、その丸い卵料理をじいっと凝視しながら質問をすると、七瀬がそう答えてくれた。
この料理の名前はとるてぃーじゃ、と言うんだそう。
「異国のスペインでよく食べられてるんだって。本田さんの恋人が西洋料理に詳しくてね。ライスオムレツを作るのなら、こっちは混ぜて焼くだけだから、より簡単だよって教えてくれたの」
「へえ、本田さん。そんな人いるんですね!」
「ええ、まあ……」
「君の恋人の話は今いいからさ、早く食べようよ。僕お腹すいて来た」
「じゃあ私、これみんなのお皿に取り分けるね」
とるてぃーじゃの右横に置かれている大きめの匙で、七瀬が四人の皿にそれぞれのせていく。
因みにここ霞柱邸では隠の本田さんも、一緒の空間で食事をするのが通例になったようだ。
毒舌で人に興味がない。
隊士の間でそんな評判が一人歩きしていたけど、俺との刀鍛冶の里任務で彼の人柄が少しだけ変化したらしい。