恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎
七瀬…着物姿かわいかったな。
明るい若葉色の装いは夏にぴったりで、彼女によく似合っていた。
いつも肩の下で一つ結びにしている髪は玉かんざしでまとめていて、普段隠れているうなじが良く見えて凄くドキドキもした。
するとズン…と体に走る高揚感が自分を襲う。
鬼を倒した後はいつも気分が高まってしまい、帰宅してもなかなか寝付けないのだけど、今日のこれは ———
下腹部にそっと掌を当てると、何だかむずむずした感覚がする。
………はあ、と俺は一つため息をついた。
これ、宇髄さんに相談しておいて本当に良かったなあ。
数秒間、それまで歩いていた足を一旦止めて深呼吸していると、カァーカァーと鴉の鳴き声が何処からか聞こえて来る。
鎹鴉の天王寺松衛門(てんのうじまつえもん)だ。
「オイ! 七瀬カラ手紙ダ!」
「え、えー……。頃合い良すぎだなあ」
左腕に止まっている相棒の脚にくくりつけてある文を取り、早速中身を確認すると。
「えっ……時透くんとの合同誕生日会??」
予想外の言葉が書いてあった。
何かの間違いとも思ったが、きちんと”竈門炭治郎 様”と自分の苗字と名前が記してあるので、それが俺の元へと正しく届いた事を証明していた。
なるほど、来月時透くんは誕生日なのか。
文を最後まで読み終えた俺は元通りに折りたたんで、隊服の胸の衣嚢(いのう=ポケット)へと入れた。
二人が……良かったな。
それがこの手紙を読んだ第一印象だ。まだ恋仲の間柄でもないのにそんな事を思うなんて、自分でも驚いている。
俺は彼女の事が好きだ。先輩隊士としてではなく、一人の女の子として見ている。この気持ちに気づいたのはかなり前からだ。