恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第60章 feliz cumpleaños / 🎴・🌫️ ✳︎✳︎
「ねえ、私甘味も食べようと思うんだけどさ。炭治郎どうする?」
「え? そうなのか?? 甘い物は別腹って善逸がよく言うんだけど本当なんだな……」
彼が手に持っている硝子製の容器はコップと言うらしい。
そのコップに入っている水を飲みながら、目を丸くする炭治郎。
彼は座卓の横に立てかけて置かれている品書きを開き、うーんと唸り始めた。
「私、ふるーつぽんちにしようと思うんだ」
「へえ、初めて聞いたな。どんな甘味なんだろう。店員さんに聞いてみても良いか?」
すみません!と後輩は近くにいた給仕の女性に声をかけ、早速ふるーつぽんちについて質問をした。
「お待たせ致しました。フルーツポンチでございます」
「うわあ」と感嘆の声を上げた私と炭治郎の前に縦に長い硝子容器に入ったそれがトン、トン、と静かに置かれていく。
事前に本田さんからふるーつぽんちがどんな物か聞いていた私は何となく予想出来ていたのだけど、目の前にある甘味は自分の思考を遥かに超えた食べ物だった。
細かく切られた果物が下から上まで透明な液に浸かっており、見た目から清涼感も感じられる。
ライスオムレツを食べた際に使用した匙より長いそれで、まずは林檎を一口食べる。
「美味しい! 初めて食べる味だから何て表現すれば良いか難しいけど……今の季節にはぴったりだね」
「確かに蒸し暑い季節に食べるのは良いんじゃないか?! 俺、この液も好きだなあ」
その後も美味しいね、美味しいねと言い合いながらフルーツポンチを食べていると、ライスオムレツ同様あっという間に器から消えてしまった。
「もうお腹いっぱいだよ〜! はち切れそうだもん。炭治郎はどう?」
「まだ余裕はあるけど、腹八分目がちょうど良いって言うし。俺は満足かな」