恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第59章 左目に夜華(よばな)が咲く / 💎
「俺は七瀬の事が好きです! いずれ娶ろうと考えています。もちろん彼女の同意を得た上ですが……」
「ふむ、続けてくれ」
さあ、天元は男を見せれるか ———
「どうか七瀬とのお付き合いを認めて下さい! お願いします!」
どうやら心配は杞憂だったらしい。
そして天元の隣で話を聞いていた七瀬は瞳を潤ませ、信じられない思いで胸がいっぱいになっている。
『どうしよう、嬉しすぎる……』
「宇髄殿」
「はい……!」
飄々と。そしてちゃめっ気を見せていた慈悟郎の声色が真剣な物に変化した。天元の背中に緊張と言う冷や汗が一筋流れる。
「七瀬は普段忌憚なく物を言うが、肝心な時に自分の気持ちを引っ込めてしまう性質じゃ。お前さんはそんな時でもこの子の心を支えてあげれるか?」
『そんなん、最初っからわかってる!! だから答えは……』
「はい、よく理解しています。彼女は隊士ですので、自分の身は自分で守れる人です。だから俺は七瀬の気持ちを…心を…どんな時でも受け止めて、支えていきます」
真っ直ぐと迷いがない一つの眼(まなこ)で、慈悟郎を見据えた天元の表情は実に清々しい物だった。
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「もう帰っちゃうんですか? 久しぶりに会えたのに」
「ああ! おぬしの顔も見れたしのう。それに……」
「桑島さん、お願いですからこれ以上俺を試すのは勘弁して下さい」
天元と慈悟郎が客間で話し終わってから一時間後、二人は七瀬・雛鶴・まきを・須磨と共に玄関にいた。
満足気な慈悟郎に対し、天元はややたじろいだ様子を見せている。
「はて、何の事じゃ?わしはなーんもしとらんぞ」
そしらぬ顔をしてとぼける慈悟郎だ。