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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第59章 左目に夜華(よばな)が咲く / 💎



「おい、早く言えよ」
「え? 何を……あ、名前ですか?」
「そーそー」

『まいったなあ』

ふう…と深くて長い息を一つはいた七瀬は、意を決して思い人の名前を紡いだ。


「天元さん……」
「ん? 何だー聞こえねえぞ?」

『こんな至近距離で言って聞こえないわけないのに!!』


清水の舞台から飛び降りる勢いで勇気を出したと言うのに、天元の意地悪い返しに泣きそうな顔になる七瀬。
そんな彼女が愛しくてたまらない天元は再び「おい、名前呼べ」と催促した。


「天元さん!!」
「ダメだな、色気がねえ。却下だ!って事でもう一回」

『何なの、もうー!! 』


小さい声でもダメ、大きい声でもダメ。
ではどうすれば良いのか。
困り果てている七瀬に、最初から大きな要求をしたのは酷だったなと思い直した天元は、助け舟を出す事にした。


「お前、嫁達呼ぶ時って自然じゃん?あの感じを思い出してさ、言ってみてくれよ」

「お嫁さん達を……?」

「そーそー」

天元にそう言われた七瀬は、三人の嫁達の事を順番に思い出していく。

「雛鶴さん」と呼べば「どうしたの?何か困った事でもある?」といつも自分を気にかけてくれる様子が。

「まきをさん」と呼ぶと「鍛錬?クナイで良ければ相手するよ」と自主稽古に付き合ってくれる様子が。

「須磨さん」と呼べば「美味しいお団子見つけたんです!」と一緒に食べようと誘ってくれる様子が。


「七瀬ちゃんが天元様の継子になってくれて、本当に良かった」

それは天元が任務で留守にしていた時に、三人から口々に言われた言葉だ。

心の中がじわりとあたたかくなった七瀬は、目の前で自分の事を愛おしく見てくれている彼に声をかけた。


「天元さん、大好きです」
「……!」

一度目とも二度目とも違う七瀬からの呼びかけは、予想以上に天元の心を跳ねさせる物であった。

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