恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第59章 左目に夜華(よばな)が咲く / 💎
「んっ……」
天元は布団のすぐ側まで近づいていた七瀬に身を乗り出し、口付けを与えた。一度目は右頬へ、これは彼女が自分を受け入れてくれるかどうかの確認の為だ。
そして二度目は、勿論ここである。
ちう、と長めに天元は吸い付いた。好いた女の瑞々しい唇に。
ふう…と息をこぼしながら顔を離した彼は、真っ赤な顔をした七瀬に満足していた。
「避けられたら地味に傷ついてた所だったわ、安心した」
「避けるわけ、ないです……」
そーかそーかと、恋人になったばかりの継子の頭を余裕を感じる仕草でポンポンと撫でる天元に対し、七瀬は瞬きを多くしたり、自分の掌で片頬を押さえたりと、全く落ち着きがない。
「その、いつから…なんですか?」
「いつからって何の事だ。主語をはっきり言ってくれないと、わかんねーぞ?」
「えっ? それは…その…」
主語を言わないとわからない、と言うのは天元のカマかけである。
彼は七瀬の口からはっきりと聞きたい為に、このような事を言っているのだ。
「おっまえ、普段は俺にバシバシ突っ込むくせに、こう言う時はしおらしいのな」
「〜〜!! 」
“そー言うとこ、すっげえ好み”
ちうちうと二回程啄む音が響いた後、七瀬のふっくらした唇がチロリと舐められた。
「………!! 師範! やめて下さい、恥ずかしい!!」
「だって、お前かわいすぎんだもん。諦めろ。それから……」
“師範じゃなくて、下の名前で呼べ”
七瀬の右耳に落ちるのは、低くて艶っぽい囁きと、あたたかな口付けだ。閉じたまぶたと共に体を捩らせた彼女は、とても抵抗する気になれず、天元の胸の中へと引き寄せられてしまった。