恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第59章 左目に夜華(よばな)が咲く / 💎
七瀬が天元にツッコミを入れ、しんみりしていた空気はいつものように穏やかな物へと、変化している。
「嫁達三人に遺言残そうとしてたら、とうとう舌も痺れちまってよ。あー俺このまま死ぬのか、冴えねえなあ。四人目の嫁にって奴も見つかったのになあって」
「良かったじゃないですか。こうして生還出来て。師範、禰󠄀豆子に足向けて寝れないですねー」
『あれ? いまいち伝わってねえ?おっかしーな』
天元は七瀬の鈍さに大分面食らってしまう。正直に伝えるか、相手が気づくのを待つか。
彼はほんの数秒、脳内で逡巡するがすぐに答えを導き出した。
「七瀬、俺を見ろ。大事な話がある」
「えっ?……は、はい……」
『名前で呼ばれた……!! 何で? わけわかんない……』
七瀬は混乱しているまま、天元に言われた通りに彼と目を合わす。臙脂色の瞳がじいっと彼女を捉えた。するとドクン! と跳ね上がる七瀬の心臓だ。
一秒、二秒、三秒…。時間がゆっくりと経過していく度に、彼女の鼓動を打つ速度が早まっていく。
「俺さ、お前の事好きだわ。だからこれまで通り、この家にいろ」
「はっ……?」
沈黙が五秒程、二人の間を支配した。自分に向けて言われている言葉が信じられない七瀬は、忙しなくまぶたをぱちぱちと動かし始める。
『師範が私をすき……って?? えっ、』
「えーーー!! 何で? どうして?」
「何でも何もまんまだよ。俺はお前が好き。あ、もちろん一人の女としてな」
「……信じられないです」
七瀬の首が右に一回傾き、そして左に一回首が傾く。
「んー、まいったな。これでもか?」
腕組みをしている天元は右手を七瀬へと伸ばし、そして…