恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第59章 左目に夜華(よばな)が咲く / 💎
〜恋人(幸せ)エンド〜
大正⚪︎年、十一月中旬。
炎柱を務めていた煉獄杏寿郎が、“無限列車”と呼ばれる列車での任務で殉職した。上弦の参との死闘であった。
その四ヶ月後の三月下旬、天元は竈門炭治郎・竈門禰󠄀豆子・我妻善逸・嘴平伊之助の四人と共に遊郭での任務にあたる。
上弦の陸との激しい戦いだったが、全員が命を落とす事なく無事に生還した。
しかし、代償は大きく……
★
「ただいま戻りました! あ、雛鶴さん、師範は?師範……」
天元が遊郭任務を経て、蝶屋敷から帰還した数日後。七瀬は二週間の県外任務から音柱邸に帰宅した。
「大丈夫、大丈夫だから……まず深呼吸して」
「あ、はい。すみません」
上り框(あがりかまち)に腰掛けた継子。雛鶴は七瀬の背中に手を添え、ポンポンとゆっくりそこを叩いた。
スウ…ハア、と深い呼吸を一つした七瀬を確認した雛鶴は、ここでようやく「おかえり」と声をかける。
「無事に帰って来てくれて、ありがとう」
「はい……雛鶴さんも無事で良かった……」
二人の両目から涙がこぼれた。やがてまきをと須磨も廊下の奥からやって来て、しばし四人で無事を称え合う。
「まきをさん、須磨さん。ただいま帰りました」
「お帰り、待っていたよ」
「七瀬ちゃんもお帰りなさいです〜」
ぎゅう、と一際強く抱擁をした須磨は大粒の涙を流している。
「七瀬ちゃん、天元様の所に行ってあげて」
「はい……」
「失礼します…」
湯浴みを済ませた七瀬は、襖を静かに開けた。すると部屋の中央に布団が敷かれており、天元が寝ているのが視界に入る。
睡眠が深いのだろう。珍しく気配を察知しない彼に七瀬は胸が潰れそうな思いだ。
『どんなに小さな物音でも拾って起きる師範が……』