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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第59章 左目に夜華(よばな)が咲く / 💎



『ねえ、君さ。その槍は飾りなの? 刀と違う得物を持っているって事は他の隊士と異なる戦い方をするんじゃないの?』


それは二週間前。
霞柱である、時透無一郎との共同任務での出来事だ。血鬼術を使う鬼だった。これは特殊な力、術とも言っていいだろう。


その鬼が使用した術は「落葉の蔦(らくようのつた)」

術名通り、蔦の葉が放射状に襲いかかって来る物で、同行した隊士達の手、足、胴体などに巻きつき、締め上げて離さなかった。


「ぐえっ、」
「いっ……」
「息が……でき……」

七瀬は鬼の本体から出ている蔦の根元になっている部分を切り落とそうと、壱ノ型で近づく。
が、すんでの所で鬼にかわされてしまう。

「参ノ型・聚蚊成雷(しゅうぶんせいらい)」

槍を回しながらの波状攻撃で、隊士達に巻きついている蔦は二本切り落としたが、後一本が残ってしまう。

『思ったより距離が……!! 肆ノ型……どうしよう、今から型を打っても間に合わない!!』

「う、うわぁぁぁ!!!」

隊士の胴体に巻き付いた蔦がうねる波のように、縦へ横へ揺れる。
そして地面に一直線に向かって叩きつけられてしまう。


——— その時。


「霞の呼吸・伍ノ型」

“霞雲(かうん)の海”

七瀬の前方に周囲を丸ごと包むかのような霞が突然現れた。
前方や横、そして後方が全く認識できなくなる。


ヒュヒュッ! ブチッ!

『蔦が切れた音だ!! それと……』

喉が潰れたようなうめき声も届いた。段々と周囲の霞が晴れてくる中、彼女が視界に捉えたのは自分より少しだけ背丈が高い無一郎の背中だった。


舞い上がった彼の長い髪の隙間から見えた物は、自分の隊服の背中にも刻まれている”滅”の一文字。

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