恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第59章 左目に夜華(よばな)が咲く / 💎
「これが俺の呼吸だ。よーくその体に染み込ませとけよ?」
ニヤリと笑った天元は二本の木刀を地にトン、当てる。
すると木刀にもヒビが入り、あわや砕ける一歩手前の状態になったのだった。
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「お疲れさん」
「…ありがとうございます」
昼食を終え、縁側に隣り合って座っている七瀬と天元。
二人は雛鶴が用意してくれたほうじ茶を飲んでいる所だ。
一口茶を飲んだ七瀬は、ふうと深い息をはいて話し始める。
「師範に得物を抜かせた、呼吸を使わせた、よし!と思っても更にその上をいく事が出て来ます」
「そりゃお前……俺は柱だぜ?一般隊士に簡単に追いつかれるわけにはいかねえんだよ」
「ふふ、確かにそうですね」
七瀬は早朝の時間帯に帰宅した際、天元が汗をかく程素振りをしていた姿を思い出す。
『師範は言うだけじゃなくて、ちゃんと努力もしている。霞柱は天才型だから特別かもしれないけど……多分他の柱の皆さんもそうなんだろうな』
彼女が任務を共にした事があるのは炎柱、水柱、霞柱、恋柱。それから天元の五人だ。
「皆さん、本当に総合力が高いですよね。柱だから当たり前なんですけど。特に霞柱は次元が違います」
「まー剣を持って二ヶ月で柱に昇格するなんて奴はなかなかいねえよな」
「………」
「おい、どうした?」
七瀬は霞柱 —— 時透無一郎の剣技を初めて観た時に愕然とした。自分より年下でこんなに剣才に溢れている人間がいる事にだ。それらを正直に、師範へ思いを吐き出して行く。
「自分が嫌になりました。師範が筋力の鍛錬を提案してくれたから、以前より力がついたけど…あの時は全然ダメでしたから」
「………沢渡」