恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第58章 Evviva!(エッビーバ) / 🔥 ✳︎✳︎
じいっと自分を見つめる二つの瞳から目が離せなかった。
地下の校閲部でも一際輝く双眸が、今この瞬間はゆらゆらと揺れているからだ。
普段ははつらつとしている彼。だけど私の目の前で見せてくれている表情は、とても艶っぽい。
「明るい、所は……恥ずかしい、です」
「ふむ、そうか」
おでこに一つ彼がキスを落とすと、急に体がふわっと浮く感覚がした。
「え、あの、下ろしてくだ……」
「ここは恥ずかしいのだろう?であれば別の部屋に行くしかあるまい」
確かに明るい所は恥ずかしいって言ったけど、今のこれも凄く恥ずかしい……!!
自分の脇と膝裏をしっかりと支えてくれる、がっしりした両腕はもちろん杏寿郎さんの物だ。
彼の衣服からは、いつもの品があるフレグランスの香りがふわっと鼻腔に届く。
元カレと同じ香りだけど、その思い出はすっかりと上書きされてしまった。
スタスタと歩く杏寿郎さんにそれ以上抵抗するのはやめて、あたたかな彼の体へと身を寄せる。すると右耳に届くのは彼の心臓が鼓動を刻む音だ。
『あ、速い……!もしかして緊張してくれて、る?』
とある一室の前に着くと、杏寿郎さんはドアノブを右肘を使って器用に開き、扉を続いてパタンと閉めた。そのまま真っ暗な中へと足を進めていく。
私の視界に入って来たのはセミダブルサイズのベッドだった。
ゆっくりと静かにシーツへと下ろしてくれたかと思うと、トンと肩を押されて背中がふわりとベッドに当たる。
「今、灯りを点ける」
カチッと真上で音が聞こえると、オレンジ色の灯りで周囲がぼんやりと光った。
「……これで恥ずかしくないか?」
「……さっきよりは」
「そうか」
私の左頬をふわっと包み、笑顔を見せる彼に自分の心臓が心地よく跳ねる。