恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第58章 Evviva!(エッビーバ) / 🔥 ✳︎✳︎
「伊黒の彼女が甘露寺蜜璃と言って、芸術肌なんだ。美大時代はイタリアに留学していたようでな、青の洞窟は本当におすすめだと以前聞いた事がある」
「えっ?伊黒さん、彼女いらっしゃるんですか……」
「ああ、いるぞ!!」
そっか、いるんだ……。
校閲部に来て三ヶ月。彼のネチネチは多少和らいだが、切れ味が鋭い発言は余り変わらない。
聞けば甘露寺さんの前だと伊黒さんは、普段見せない表情をするらしい。
…………想像出来なかった。
いや、だってあの伊黒さんだもの。でも誰だって恋人の前では他の人には見せない顔と言うのかな。
顔だけじゃなくて態度もか。甘露寺さんがどんな人なのか全く予想が出来ないけど、杏寿郎さんが悪く言わないと言う事はきっと素敵な女性なのだろう。
「私、会ってみたいなあ。どんな方なんですか?」
「甘露寺か?」
「はい」
甘露寺蜜璃さんはとても明るく、優しい人との事だ。男女に慕われているとも言う話だ。
私は益々甘露寺さんに興味が湧き、再度杏寿郎さんに会ってみたい旨を伝えた。
★
「ご馳走様でした。いつもありがとうございます」
「気にするな!俺が君を連れて来たかったんだ」
Forza!を後にした私と杏寿郎さんは、深夜でほぼ誰もいない商店街を歩いていた。手は当たり前のように繋がれている。恋人繋ぎと言うヤツだ。私達の手は掌同士がピッタリと重なっていた。
「……七瀬」
「はい、どうしました?」
急に彼が歩いていた足を止めたので、私は杏寿郎さんを見上げた。するとそこには夜でも輝きがなくならない、陽光のような双眸が私を見つめていた。
「俺はもっと君と一緒にいたい。可能なら…朝まで」
「………」