恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第58章 Evviva!(エッビーバ) / 🔥 ✳︎✳︎
「じゃあまた月曜日に!」
「はい、おやすみなさい」
乗り換え駅に着いた私と杏寿郎さんは、乗って来た電車を見送り、該当のホームに移動していた。時間はもう少しで午前零時を回る。
終電も間近な時間帯、それから金曜日と言う事もあってホームで待っている人はかなり多い。
「行かないのか?」
「杏寿郎さんを見送ってから行こうかなあって」
「俺も君を見送ってから行こうかと考えていたのだが」
ふふ、なんだか嬉しいな。
……ふと先程も感じた自分の胸の中にある思いが湧き上がって来る。それはまだ彼といたい —— その感情だ。
「その……もう一件行かないか?自宅の近くに最近オープンしたダイニングバーがあってだな。カフェメニューもあるから、きっと君も気にいるのではないかと思うぞ!」
「えっ……」
驚いてしまった。どうやら杏寿郎さんも私と同じ気持ちを抱いているらしい。
「行きたいです!」と、ほぼ迷う間もなく。彼に了承の返事をした私は杏寿郎さんと一緒にまた電車に乗る為、絡めていた手をきゅっと繋ぎ直した。
五分すると、ホームに電車が入って来る。これは本日最後の電車 —— 終電だ。
★
「美味しかったあ。お酒もだけど、カフェメニューのティラミスが絶品すぎて感動しちゃいました」
「あれを初めて食べた時、君はきっと気に入ってくれるだろうとは思ったんだ。予想以上に喜んで貰えて俺も嬉しい!」
このお店の名前は”Forza!”
先程ミラノとの試合で横断幕に書かれていたイタリア語だ。
オーナーご夫婦はイタリアから来日して十年。旦那さんも奥さんも語学留学で日本にやって来たとの事だった。
「お店に飾ってあった写真を見てたら、またイタリアへ行きたくなっちゃいました。カプリ島の青の洞窟は行けなかったから、今度は訪ねてみたいなあ」