恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第58章 Evviva!(エッビーバ) / 🔥 ✳︎✳︎
「この時間で監督がチームの士気を上げる言葉をくれたりするんですよね?カタールW杯の日本代表を追った番組で観ましたよ!」
「ああ、それなら俺も観たぞ!」
彼の双眸に嬉しそうな感情がまた浮かんでいる。両チームの選手達が再び入場して来た。時刻は午後七時二十五分。キックオフは間近だ。
ピピーッ!!
主審が吹くホイッスルがスタジアムに響く。センターサークルに両チームのキャプテンが向かい合って立ち、コイントスをしている。
主審がコインを上空に弾き、掌で手の甲を覆いながらパッと隠した。
「ボール権を取ったんですね」
「大体はそうだな!これが昼間、太陽の光が強い時間帯だとピッチを選ぶ場合もある」
サッカーは始まる前から心理戦なんだな。
スタジアムの中央からもう一度主審のホイッスルが聞こえた。
午後七時三十五分。インテルとの試合が始まった。
★
「はあ〜!流石ですね。海外チームのサッカーを初めて観ましたが、プレースピードが速い!それから当たり負けしない選手も多くてびっくりしました」
「そうだな!海外チームは練習から本気で怪我を厭わないプレーをしてくるし、何より気持ちが強い。最近は日本人選手もメンタリティが強いタイプも増えては来たが……世界との差はまだ感じる」
試合が終わり、スタジアムから出る為に座席を立った私達。本日のスコアは一対三でミラノが勝利。
前半二点先制したミラノに、日本側は後半始まってすぐ一点返したのだが、アディショナルタイム終了間際にダメ押しの三点目を入れられてしまい、これが決勝点にそのまま繋がったのだ。
「七瀬、はぐれると大変だぞ」
「ありがとうございます……」
人の波に入ろうとした瞬間、彼の左手が私の右手をきゅっと掴んだ。