恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第56章 明けない太陽の世界へ〜彼目線〜 / 🔥✳︎✳︎
「どうだ?俺の血は」
「とても甘くて、美味しかったよ」
「それは嬉しいな」
素直な気持ちだった。何故なら自分も彼女の血を初めて口にした時、全く同じ事を思ったからだ。
「でも、ごめんね。突然……」
「気にするな。ああ、しかし俺も…」
君の血が欲しい。喉が渇いて渇いてたまらないんだ ———
彼女の唇にいつもやっているように牙を当てる。本能を刺激する味わいが口腔内に入り込んだ。
「ふむ、鬼になったからか、更に甘くなったぞ」
七瀬の血は自分の血に近いのかもしれない。
「杏寿郎が私の血を欲してたのがよくわかった。本能が求めちゃうんだね」
「そうだな」
彼女の目元に親指でゆっくりと触れた。鋭く長い爪は当てないように。誤って例え皮膚を裂いてしまったとしても、すぐに傷は治るのだがそれはしたくない。
「ねえ……私、鬼の目になってる?」
「ああ。桃色の瞳だな!かわいらしい君に丁度良い色だ」
ずっと気になっていた疑問を口にした七瀬の目元に柔らかい口付けをそっと落とした。
「七瀬、鬼になってくれてありがとう。愛しい君が俺のすぐ近くにいる。こんなに幸せな事はない」
「杏寿郎……」
両手で恋人の頬をゆっくりと包む。愛おしくてたまらない。すると俺の目元にも小さな手がそっと触れた。先程の自分と同じように、長い爪が目に当たらないように気遣ってくれた。
「あなたの目は本当に綺麗だね」
「そうか?七瀬の目も綺麗だが」
「ありがとう」
にっこりと綺麗な笑顔を見せてくれる彼女に、生涯で一番大切な言葉を伝えよう。
「俺は君を愛している」
「私もあなたを愛しているよ」