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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第54章 八重に咲く恋、霞は明ける / 🌫



「七瀬入るよ、いい?」

「あ、はーい。どうぞ」

昼食が終わった後、無一郎は七瀬の部屋へとやって来ていた。文机に座り何かを書いている彼女の手元をちらと確認した霞柱はふう、とため息を一つついた。


「全く煉獄さんも懲りないよね。既に継子がいるのにさ」

「違う違う、今回は手合わせの申し込み」

「へえ、受ければいいんじゃない」

「やっぱりそう思う?」

杏寿郎は勝負に負けた後も何かにつけ、七瀬へ「俺の継子になってくれ!」と文を送っていた。その度に無一郎が手紙を破り、機嫌を悪くし、稽古が普段の倍キツくなるのだ。


「炎柱、強いだろうなあ」

「やるからには勝つ気でいきなよ。何の為にいつも僕と稽古してるの」

「ええ?また無理難題を……」

あははと乾いた笑いを漏らした七瀬に無一郎は真剣な顔をして、問いかけた。


「あのさ、君はどうして八十八番が好きなわけ?随分暗い歌だよね」

「え……うん」

八十八番の和歌は旅先で一夜を共にし、はかない縁だとわかっていても恋をしてしまう —— いわば行きずりの恋を歌った作品だ。


「無一郎くんは八月八日生まれでしょ。だから」

「え、それだけ?」

「………そうだよ」

七瀬の返答が予想外の物だった為、無一郎は面食らった。
しかし、ここでようやく自分の気持ちに気づく。


「俺、七瀬の事が大好きだよ。自慢の継子だから絶対煉獄さんの継子になんてさせない」

「……えっ?えっ?」

無一郎からの突然の告白に、七瀬は戸惑った。パチパチと瞬きの数は多くなり、信じられない思いで胸がいっぱいになっている。

「何、その鳩が豆鉄炮食らった顔は。また話聞いてなかったの?」

「違うよ、ちゃんと聞いてました!」

無一郎の機嫌が本気で悪くなる前に、七瀬は精一杯の否定をした。

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