恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第54章 八重に咲く恋、霞は明ける / 🌫
「えっ?七瀬を継子にですか?また何でそんな事を……」
「うむ!以前見た彼女の呼吸の精度が素晴らしくてな。育成してみたくなった!それだけだ」
「天才・霞柱と毎日鍛錬してますからね。先日彼女と合同任務でしたが、確かに技術は飛躍した気がしますよ」
「やはりそうか!」
『師範がこの顔をしてる時って、外野がもう何言っても聞かないからなあ……』
継子は杏寿郎の瞳がきらきらと輝く様子を、感心が半分。呆れが半分と言った気持ちを抱いて見ている。
『……でも霞柱の本気が見れるのは嬉しいかな。七瀬は刀鍛冶の里任務以降、変わったとは言ってたけど……私はあんまりそう見えないんだよね』
彼女の脳裏に浮かぶのは人に興味がなく、いつも無表情の無一郎だ。「師範、行きましょう」と、炎の継子は杏寿郎を促し、霞柱との決戦の場へと共に向かった。
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「おい。伊黒こいつら、すげーな」
「ふん、時透め。なかなか良い表情をしている」
「しのぶちゃん、私胸がときめいてばかりで感情が忙しいわ!素敵♡」
「煉獄さんも時透くんも、とても楽しそうですよね」
「おい、冨岡ァ。何見てんだ?」
「百人一首の最初の句から、読み直している」
今更かァ?と実弥が眉をひそめる中、行冥は数珠を鳴らしながら涙を流していた。
「嗚呼、素晴らしき名勝負……」
『無一郎くん、凄い!四連続で札を取った!あっ、今回は炎柱の方が速かった……』
スパン、スパン、スパン、スパン——— と気持ちの良い音が四回畳の上を走り抜けた。
無一郎が連続で札を取れば、すかさず杏寿郎が連続で札を取る。
柱の二人が繰り広げる勝負はさながら格闘かるたとでも言おうか。
「それでは最後の札を読みます……難波江(なにわえ)の蘆(あし)のかりねのひとよゑ(え)みをつくしてや恋ひ(い)わたるべき」