恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第53章 Latte ship / 🔥✳︎✳︎
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「杏寿郎さん、六段合格おめでとう」
「ありがとう!七瀬は二段の試験は受けないのか?」
「うん、前にも言ったけど初段で充分だもん」
竈門少年とのフライトから二週間。俺は剣道の段位試験に無事合格した。目の前には好物のさつまいも料理の数々。
昼は実家で祝ってもらい、夜は七瀬と二人で穏やかな時間を過ごしている所だ。
………今から俺は彼女に求婚をする。
故に先程から緊張している。父は母に求婚した時、パイロットの試験より落ち着かなかったと以前聞いた事があるが、自分も今正にそんな状態だ。
「ごちそうさま!ラテを淹れて貰えるか?」
「勿論。今日はね、ちょっと上質な牛乳を見つけたんだよ」
キッチンへ彼女と共に食器を持って行った後、横に並んで洗い物をする。俺は炊事があまり得意ではないが、七瀬の負担が少しでも減れば…と言う目的で、食器洗いはしている。
「じゃあ、杏寿郎さん。ちょっと待っててくれる?」
「承知した!」
ここからが勝負時だ。七瀬から離れ、テーブルに座ると頭の中でシミュレーションを重ねる。
ちらと横目で確認すると、彼女はいつもの様子でカフェラテを淹れてくれていた。
俺は立ち上がり、七瀬を後ろからそっと抱きしめる。
「杏寿郎さん?どうしたの」
「うむ………」
さてどう切り出そうか。普段は迷いなく判断が出来る自分だが、珍しく逡巡する時間が多い。
「君と毎朝”おはよう”と言いあいたい」
「えっ……」
ミルクフォーマーに牛乳を入れようとした彼女の右手がピタっととまる。
「カフェラテを毎日飲むのは難しいが……コーヒーは可能だろう?」
「うん、そうだね」
「俺と夫婦になってくれ!!結婚しよう」