恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第53章 Latte ship / 🔥✳︎✳︎
管制側の返答がない。マイクがオフになっていたかと思い、改めて自分の物を確認するときちんとオンになっているようだ。
「む?聞こえなかったか?ではもう一度……」
「大丈夫です!申し訳ありません、煉獄キャプテンからお言葉を頂戴出来るとは思わなかったので……思考が少し固まりました」
良かった、今度は応えてくれた。よく考えてみれば機長がアナウンスする機会というのは乗務中が殆どだ。
確かに彼女が驚くのも無理はないな。
「そうか、それは大変に失礼した!だがどうしても一言伝えたかったんだ。Good control !また機会があればよろしく頼む」
顔も名前もわからない航空管制官だが、再び共に仕事できる事を願い、俺は激励の気持ちも込めて彼女にエールを贈る。
「はい!ありがとうございました!……えっと、Good flight!」
マイクを外し、ふうとひと息つく。すると右横にいる竈門少年が「彼女の気持ち、凄くわかります」とやや、苦笑しながら言って来た。
「俺もあなたと乗務する前は胃が痛くて……」
「何だ、君。あの時自己紹介で言っていたのは冗談ではなかったのか?」
「まさか!れっきとした本音ですよ。今はお陰様で砕けた話もさせて貰ってますけど……煉獄キャプテンは皆の憧れなんですから」
「ありがとう、その言葉に恥じぬよう今後も精進する!君も早く機長になれ!…待っているぞ」
「えっ、いや。俺はまだまだ未熟なコーパイですから…」
両手を胸の前で振りながら謙遜する少年だが、七瀬から聞いていた通り本当に優秀だ。
責務や重圧は倍増するが、それ以上にやり甲斐を感じる事が出来る。それがまたパイロットとしての成長に繋がるからな。
「今日はこの後、どこへ行くんだ?俺は新千歳だ」
「函館です。同じ北海道ですね!」
竈門少年との二回目のフライトは非常に有意義な時間となり、この後乗務後のブリーフィングを終えた俺たちクルーは次の現場へ向かったのだった。