恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第52章 Espresso Control / 🌊✳︎✳︎
ふう、とため息と肩を同時に落とした私は、ゼリーとスポーツドリンクが入ったポリ袋を持って家に入る。
「おいしい…」
どちらもコンビニやスーパーに行けばいつでも買える物だけど、大好きな人が手間をかけて購入してくれた。
この気持ちが心の底から嬉しい。
ゼリーを一つ食べ切り、スポーツドリンクも一本飲み切った。
余程体が水分を欲していたらしい。
義勇さんにお礼の返信をした後、再び布団の中に入る。引き続き微睡(まどろみ)の世界に誘われてしまい、私は寝入ったのだった。
★
—— そして、一週間後の土曜日。
「十日も遅れちゃってごめんね。改めて義勇さん、お誕生日おめでとう。知恵熱出したみたいで何か恥ずかしかったよ、私」
「お前が懸命に業務に取り組んだ証拠だろう。別に恥ずかしがる必要はないんじゃないか?」
彼の自宅マンションにようやく来れた私は、毎年作っている鮭大根・豚汁・白飯・グリーンサラダを食卓に出した。
「ありがとう。でも気合い入り過ぎた反動で、体調崩したなんて子供みたいじゃない?」
「確かに子供のようだと感じる時はあるな」
「ええ?ひどいなあ、もう……。あれ、義勇さん?」
急に会話が途切れたと思い、食べていた鮭大根から目線を上げると、そこには真剣な顔でもぐもぐと咀嚼する彼の姿があった。
私はふふっと笑って、しばらくそんな様子を観察してみる。
目の前の鮭大根からひとときも視線を離さない彼は、時間をかけてゆっくりと嚥下した。
「………………………美味い」
「………ちょっと、義勇さん!切り替え早すぎー」
「?そうだろうか」
「そうだよ!……でも凄く美味しそうに食べてくれるから、あんまり突っ込まないでおくね」
「……すまない」
それから義勇さんは、再び鮭大根を黙々と食べ始める。