恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第52章 Espresso Control / 🌊✳︎✳︎
「どうしたの?珍しいね。こんなキス…」
両手を私の顔の横につき、見下ろしてくる義勇さんの紺色の双眸。
そこには普段穏やかな彼からは少しイメージしがたい、強い恋慕の情が瞳孔の潤みと共にゆらいでいた。
「今日のお前は特別にかわいい」
「えっ、そうかな??」
バクバクバク…と早鐘を打つ心臓は、暴れ具合が凄まじい。
普段“かわいい”と言ってくれる事があまりない為、私の心拍数は倍速で上昇している。
「ねえ、義勇さん。お願いがあるんだけど」
「何だ」
ふわっと私の左頬が包まれ、ゆっくりと撫でられた。そこにちう、と優しく落ちて来るのはあたたかな彼からの口付けだ。
「こうやってたくさんキスしてくれるの、凄く嬉しいのね」
「ああ、お前にするのは心地良いからな」
ありがとう、とお礼の言葉と共に私は彼に小さなキスを贈る。
「義勇さんがたまに言ってくれる”好き”も凄く嬉しくてね。だから……もっとその回数を増やしてくれると嬉しいなあって」
「増やす……」
「うん」
義勇さんが目線を私から天井に向け、考える事1分強。「それは出来ない」の言葉と共に、私の瞳へ視線が向けられた。
「どうして?女の人はね、口に出して貰わないと好きって気持ちが伝わりづらいんだよ」
「そうなのか?」
「そうだよ」
「………」
再び彼が視線を天井に向けて考える素振りを見せる。
「いや、やはり出来ないな」
「えー、何で?」
こうなって来ると、私が駄々をこねる子供のようにも思えて来る。現に義勇さんも私の頭に掌を載せ、よしよしとなだめるように触れ始めたからだ。
「お前の事はいつも考えている。集中力が必要な仕事中は流石に難しいが、食事中、移動中、入浴中、就寝前…と様々だ」
「うん、嬉しいよ。ありがとう」