恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第52章 Espresso Control / 🌊✳︎✳︎
「責任重大だから、間違えたらどうしよう。そればっかり考えちゃって正直胃が痛いよ……」
「……」
週末の彼の自宅マンションで紺色のソファーに隣りあって腰掛けている私達。ふうとため息をついた私はとん、と義勇さんの右肩に頭を預けた。
「………」
『あったかいなあ……』
触れ合った場所から体の暖かかさと一緒に気持ちの温かさも伝わって来る。義勇さんは寡黙だ。だから弱音を吐いても言葉で励ますと言う事はほとんどない。
でも言葉をあまり発しない分、私の思いはいつも受け止めてくれる。愚痴はもちろん、気持ちが昂って上手く言葉がスムーズに紡げない時でさえも。
「失敗は……」
「うん、何?」
ラッキーかも。今日は言葉に出してくれるのかな?私は少しだけ高揚した心を悟られないように、なるべく落ち着いて彼の発言を促した。
「……失敗は誰にでもある。万が一そうなっても誰かがカバーする。だからあまり気負うな」
「そうなんだけどね。でもそれに甘えてばかりじゃダメだって思うんだ」
「そうか」
「うん」
ここで会話は途切れた。
「七瀬……」
「うん」
数秒置いて、彼が私の名前を呼んだ。
すると義勇さんはローテーブルに置いてある小さなカップをずずっと飲んだ後、ふうと1つ深い息を吐いて私に目線を合わす。
「すまないが、エスプレッソを淹れてくれるか?」
「わかった。じゃあ私も飲む」
小さなカップはコーヒーよりも濃厚なエスプレッソカップだ。私は自分と彼のカップを手に持つとソファーから立ち上がった。