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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第52章 Espresso Control / 🌊✳︎✳︎



「よし……」

飛行機が着陸した時、いつものようにそう声を出した私は、右手を小さく握った。
それは一見何でもない光景かもしれない。けれど、機体が離陸して着陸するまでの一連の流れにはたくさんの人が関わっている。


私は航空管制官になったばかり。1年目だ。勤続3ヶ月はまだ勤めているとは到底言えないなあと個人的には思う。


私の目の前には1人の男性の背中がある。水色のシャツ越しでもわかる均整が取れた背中。そしてグレーのスラックスをはいている両足は真っ直ぐと長く地面に伸びている。


彼は冨岡義勇さんと言う。私の3つ上で先輩管制官だ。
冨岡さんの管制業務はいつも正確で機体を迷わす事はない。そんな先輩と私。

実は ———







「どうした、七瀬」

「あ、うん。昨日の業務も完璧にこなしてたなあって思って」

別に普通の事だ ——
表情を変えずにさらりと言う彼。冨岡さん……義勇さんと私は幼なじみで、3年前からお付き合いをしている。


私が彼と同じ職業についた理由。
それは寡黙な義勇さんが飛行機について語る時、普段からは考えられない表情を見せてくれる為だ。


自分も大好きな彼と同じ体験をして共有してみたい。その一心で航空管制官になった。


「来週お前も初めての業務だろう?大丈夫か」
「うん、凄く緊張してます……」


管制業務の仕事は責任重大だ。自分の指示1つで交信をするパイロットは勿論、その機体に乗っているクルーやお客様の安全に響いてしまう事があるからだ。

自然を相手にする仕事にマニュアルは決してない。
1つ1つが時と場合によって違う。風の向き、雲の流れ、日照時間諸々。空港の規模によっては滑走路の本数だって違う。


私は羽田空港にある東京管制塔にこの4月から配属になった。奇しくも恋人である義勇さんと同じ職場だ。


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