恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第49章 両手に炎 〜炎柱ver.〜 / 🔥・🎴
「む?七瀬は苺を残すのか?」
あっという間にぱんけーきを食べた杏寿郎は、隣で2つの苺と対峙している七瀬を見ながらそう言った。
「いえ、私は苺は最後に食べる派なので…。杏寿郎さんは真っ先に食べちゃいましたもんね」
私達反対ですね ——— はにかみながら言葉を発する恋人に杏寿郎の胸がとくんと鳴った。
甘く、甘く。
突き匙(つきさじ=フォーク)で苺をぷすっとさした七瀬は一度自分の口元に持っていこうとするが、それをやめた。
どうした?と問う杏寿郎の口元に苺が近づく。
「杏寿郎さん、どうぞ。お好きですよね?」
「………!」
一瞬面くらった彼だが、自然と口をあけた。すると生くりーむの甘さと混ざり、酸味が少し増した苺の果汁が口内を満たしていく。
「あ、やっぱり酸っぱくなってますね。でも美味しい」
続けて2個目の苺を自分の口に入れ、彼女はそう言った。
「ごちそうさまでした!良かったあ、杏寿郎さんと一緒に食べれて。明日明後日は不在だから前倒しで作ったんですよ……」
七瀬の唇が杏寿郎の唇で再び塞がれた。
ちう、ちうと味わうように彼は口付けを続け、最後に舌で彼女の唇をつつとなぞった。
「頼む。あまりかわいい事を言わないでくれ。君を離しづらくなる」
「離さないでって言ったら……困らせてしまいますか?」
「君は……今そう言う事を言うなと……」
ふう、と深い息をはいた杏寿郎は額に右手を当てた。
理性と本能が脳内で激しくせめぎ合う。
奪うか、留まるか。彼は短い時間にこれ以上ないぐらい逡巡した。
それから3日後 ——12月26日の早朝。