恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第49章 両手に炎 〜炎柱ver.〜 / 🔥・🎴
槇寿郎はまだ知らない。
この時杏寿郎に禁止令を解いた為、後でとても後悔する事を。
それから3日後の昼下がり。
甘露寺蜜璃が煉獄家に来訪した———
「みなさん、こんにちは〜!今日はお招き頂いてありがとうございます♡」
両手にパンパンになった麻袋を持参した蜜璃は笑顔だった。
彼女は全員から歓迎され、室内に入る。
6人いるからたくさん買って来たと言う蜜璃。
彼女は類い稀なる大食いだ。同じく食欲旺盛な杏寿郎は大層喜んだ。
厨に移動した面々は早速蜜璃から手ほどきを受け始めた。
頭に三角巾を巻き、白い割烹着を着用したその姿は現代で言う所の調理実習と言うべきか。
「まずは上白糖と卵と油をグアーってして、それが白っぽくなったら次に牛乳をぶあーってしてね……」
ふむふむ?……と蜜璃の右隣に七瀬が。左隣に炭治郎と千寿郎が立ち、指導を受けている。
3人共蜜璃の要領を得ない説明を噛み砕こうと必死な様子だ。
「お前あの説明でわかるか?」
「いえ、父上。さっぱりです!!」
先代の炎柱と炎柱はやや離れた所から、4人の様子を見ていた。
後ろを振り向く2人。
すると、作業台の上には網に入った卵が5個ずつに分かれて置かれていた。
「父上!俺達はこれを割って準備をしておきましょう!」
「いや、あまり余計な事はしない方が……」
槇寿郎がやんわりと静止するのも聞かずに、杏寿郎は卵を次々に割って……破壊していく。
「む?何故潰れてしまうのだ?」
そこには10個の卵が見るも無惨な姿に変わり果てていた。
はあ、と深い深いため息を吐く槇寿郎。
ここで彼は息子の厨への出入りを解いた事を後悔する。
—— 物凄く。
「よもや!全部潰れてしまった!」
更に10個の卵が変わり果てた姿になった。
事態を重く見た千寿郎が、杏寿郎に申し訳なさそうに問いかける。
「あの、兄上………」