恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第48章 両手に炎 〜日柱ver.〜 / 🎴・🔥
鬼のいぬ間に洗濯、と言うことわざがある。
七瀬と杏寿郎の場合はさしずめ”ヒノカミいぬ間に逢瀬”とでも言おうか。
2人が恋仲になって1時間と少し。炭治郎が帰宅して来た。
「すみません、ぷりんの試食を杏寿郎としました」
「そっか、上手く出来てた?」
「はい!」
継子2人はぴったりの波長で、炭治郎に答えた。3人はいつも食事をする居間に集まり、談笑をしている。
『師範……何も言わないけど、気づいているんだよね』
『むう、流石の余裕だな。問いただす事はして来ないか』
七瀬と杏寿郎は笑顔を浮かべる裏で、そんな事を考えていた。
『2人から強い恋慕のにおいがする。あーあ、俺が留守の間に恋仲になったか……』
炭治郎は2人の予想通り、継子達が恋人同士になった事に気づいていた。
『でも始まったばかりのようだし、俺にもまだまだ好機はあるかな』
「師範、塩大福10個も買えたなんて運が良いですね!なかなか買えないって聞いてたので…」
以心伝心の女将と炭治郎は一般隊士の時からの付き合いである。
柱の彼は、ここぞとばかりに『取り置き』と言う手段を使った。
「え〜!流石師範ですね」
『むむ、抜け目がないな……』
この言葉に反応したのは杏寿郎である。七瀬の恋人は自分だ。それは確かな事実だが、師範の行動に彼は珍しく焦燥感を感じていた。
普段は冷静な杏寿郎だが、恋となるとやや勝手が違うようだ。
★
「師範、少しよろしいでしょうか?お話したい事があります」
「いいよ、入って」
塩大福を食べ終わった後、杏寿郎は炭治郎の部屋を訪ねた。
既に察知しているだろうと予想はしていたが、直接話しておいた方が良いと判断した為だ。
襖を静かに開けると、炭治郎が笑顔でそこにいた。
「話って何?」
「はい……」
男2人の間に見えない火花が散る。