恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第48章 両手に炎 〜日柱ver.〜 / 🎴・🔥
「ふふ、恥ずかしいけど幸せだよ」
「俺もだ」
唇が離れると、今度は互いの額をコツンと合わせる。七瀬の両手は杏寿郎の両手で包まれたままだ。
せっかく掴んだこの手を離さないようにしよう。
彼は1人静かに誓いを立てていた。
すると ———
「師範にはどう伝えようか…って、においでわかっちゃうかな?」
「む……そうだな。言わずともわかるだろうな」
炭治郎の嗅覚は人並み外れた鋭さだ。だから他人の気持ちも筒抜けになってしまう。
「七瀬…」
「うん、な……」
七瀬の言葉を飲み込んだのは杏寿郎からの口付けだった。
辿々しくも七瀬の唇を複数回啄んだ後、彼女を自分の胸に抱き寄せた。
「すまん、俺と2人でいる時に師範の名前を出さないで欲しい」
「それって……もしかして?」
「合ってるぞ。君の考えている事で」
「ふふ、わかったよ」
七瀬は広い彼の背中に両腕を回す。
いつもいつでも。
どんな異性にも海のように広い心で接する杏寿郎を見ながら、七瀬は内心ちくちくと棘のような痛みが差すのを実感していた。
“煉獄くんってかっこいいし、性格も良いし、文武両道で素敵だよね。継子同士の七瀬が羨ましいよ”
“先輩、ずるいです!私も煉獄さんと一緒に鍛錬したいし、食事も一緒にしたーい!!”
先輩・後輩と任務で一緒になる度にそんな事を逐一言われて来た。
嬉しい反面、いつか誰かに杏寿郎を取られるのではないか?そんな思いをずっと抱えて来たのだ。
「良かった、杏寿郎と恋仲になれて」
「俺もだ」
2人が恋人同士になった実感を互いに味わっていた所へ ———
「ただいまー!杏寿郎、七瀬ー、お土産買って来たよ」
炭治郎が帰宅したのだった。