恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第48章 両手に炎 〜日柱ver.〜 / 🎴・🔥
「流石蜜璃ちゃん直伝!一口で食べちゃうぐらい美味しいよね。これなら師範も絶対喜びそう。杏寿郎もそう思わない?」
「……七瀬は師範の事が好きなのか?」
「え?」
杏寿郎が彼女との距離をぐっと詰めた。
2人の顔は20センチまで近づく。
「俺は七瀬が好きだ!異性として君の事を好いている!」
「そ、そうなの……?」
うむ!と力強く頷いた杏寿郎は、七瀬の両手を自分の両手でそっと包んだ。2人の手は互いにマメやタコだらけで、掌に至っては厚く硬くなっている。
“どんどん、女の子の手じゃなくなるよ”
いつもそう愚痴をこぼす七瀬を見る度に、伝えたかった言葉を彼は口に出す。
「君はよく嫌だと言っているが……俺はこの手が好きだぞ?」
先程とは違い、落ち着いた低い声を響かせながらそんな事を言う杏寿郎。七瀬の心臓は既に爆発しそうだった。
「ありがとう…。私も……好き、だよ」
「よも……や?」
杏寿郎は一瞬だけ虚をつかれた。
好き、とは?
今しがた自分が発した言葉だが、思い人が口にするとまた違った意味で響くような気がする。彼はひとときの間(ま)にそんな事を考えていた。
「杏寿郎が……大好き」
「よもや」
「ふふ、2回目のよもやだね」
「すまん、大分驚いている」
「そっか、じゃあ…」
「………!」
杏寿郎の右頬に小さいけれど、あたたかな温もりが1つ落ちた。
「よもや」
2人の声が頃合いよく重なると、互いの顔には笑顔も浮かんだ。
「師範がよく私達の事、波長が合ってるねって言うじゃない?あれ凄く嬉しいんだ」
「奇遇だな、俺もだ」
杏寿郎の顔がまた少し近づく。そして今度は彼から彼女の唇に口付けが贈られた。