恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第48章 両手に炎 〜日柱ver.〜 / 🎴・🔥
「師範、ぷりん……ようやく完成しましたね」
「うん……ここまで色々あったから俺感動してる……」
蜜璃は杏寿郎が言ったように、菓子作りの腕は確かだった。
しかし、手順を人に説明する…と言う作業がとても苦手だった。では何故完成まで辿りつけたのか?
彼女の要領を得ない説明を、炭治郎が1つ1つ丁寧に確認していった為だ。
「甘い物とほろ苦い物、どちらの味のぷりんも無事に完成して良かったです♡」
疲弊感を背中に背負った炭治郎と七瀬に対し、日柱邸へやって来た時と変わらない蜜璃。
そして ——
「師範、本当に申し訳ありません!」
他の3人と同じように頭に三角巾を巻き、白い割烹着を着用した杏寿郎が、頭を下げながらも大きな声で詫びた。
無駄になった砂糖が2キロ、割れた卵が50個。厨の床にはこの2つが散乱している。牛乳だけは七瀬がやると押し切ったので、無事だった。
「杏寿郎、顔上げて」
「は、はい」
炭治郎は継子の肩に右手を置き、自分と向き合うように促す。
杏寿郎の左右の頬は、砂糖が少し付着していた。
「君が手伝おうって言ってくれる気持ちは俺、凄く嬉しいよ。けど…」
「はい……」
緋色の双眸が揺らめく。不安そうな様子だ。
「はっきり言うね、杏寿郎は今後半年間厨への出入りは禁止。特に調理中は徹底してほしい」
「はい、わかりました。申し訳ありません」
緊迫した空気が漂う。女子2人は何も言えずに男子2人の様子を見守るだけだ。そんな重たい雰囲気の中、これを軽くするのは ——
「ただし!七瀬の言う通り、君は盛り付けが上手だ。ついつい俺も食べ過ぎてしまう。だから盛り付けだけであれば…そうだなあ」
顎に握り拳を当てて、思案する炭治郎。
「1週間過ぎたら、厨に出入りして良いよ。さっきも言ったけど、調理中は出入り禁止!そこだけは守って」
「はい、ありがとうございます!!」
ここでようやく杏寿郎に笑顔が戻る。