恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第48章 両手に炎 〜日柱ver.〜 / 🎴・🔥
それから5日後の朝、日柱邸に客人が来訪する。七瀬と杏寿郎の後輩、甘露寺蜜璃である。
「こんにちは〜日柱様、煉獄さん、七瀬さん!今回お声掛け頂いてとても嬉しいです♡」
「甘露寺さん、いらっしゃい。今日はご指導よろしくね」
「蜜璃ちゃん、いらっしゃい!私からもお願いします」
「よく来たな、甘露寺!俺も微力ながら手伝いたいと考えている。何かあれば遠慮なく言ってくれ」
『いや、杏寿郎は見ているだけで、大丈夫だよ……』
これは炭治郎・七瀬2人共通の心の叫びだ。
蜜璃は、と言うと。
杏寿郎の申し出をニコニコしながら、必要な時は声をかけます…とやんわりと躱(かわ)す。
そして両手いっぱいに持っている荷物 —— パンパンになった麻袋を力士のように掲げた。
「煉獄さんがたくさん食べると思って、いっぱい買って来ました!」
「気遣い感謝する!」
「甘露寺さん。立ち話も何だから、入って入って〜」
蜜璃が麻袋を上り框(あがりかまち)に慎重に置く。
おじゃまします……と草履を脱ぎ、彼女は再び麻袋を両腕に抱えると炭治郎に案内されながら厨(くりや=台所)に向かう。
「蜜璃ちゃん、お菓子作り得意だもんね!流石、杏寿郎は人の事をよく見てるね」
「む……そうか?ありがとう」
「うん」
自分に向けられる笑顔。
七瀬のこの顔を独占する日など来るのだろうか。杏寿郎はまだ見えない未来に思いを馳せる。
「杏寿郎ー、七瀬ー!荷物出すの手伝ってー!」
「はい!」と揃って元気に返事をした継子達。
楽しさを全面に出しながら、2人はやや早足で厨に足を進める。
『返事の頃合いが同じか……本当、2人の波長って合ってるよなあ』
炭治郎は杏寿郎と言う存在に、再び脅威を感じていた。
そしてこの1時間後、予定通りと言うべきか。日柱邸の厨で、悲劇と言う名の喜劇が起きる。