恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第47章 B1のサンライズ / 🔥
そこからの私の記憶は曖昧だ。
普段の仕事の愚痴を聞いてもらっている内に意識が途切れて……
ズキン、ズキン、と重い痛みが頭に響く。なんとなく胸や喉の辺りも気持ち悪い。
スマホを再度確認すると、その村田くんからメッセージが届いていた。送信日時は今日の1時半。
「今日はお疲れ様!無事に帰れたかな?煉獄さんなら安心して任せられるから、頼んじゃったんだけど………」
「煉獄さん?」
………って、え?誰?初めて聞く名前なんだけど………。
「ん……呼んだか?」
「!!!!」
自分の左隣から低く、とても艶っぽい声が聞こえた。人は驚きすぎると声を発する事を忘れるらしい。
「あの、私?何で……こんな、えっ?」
あたふた、オロオロしていると急に頭頂部に温かいぬくもりを感じた。
「少し落ち着こう、まずは深呼吸だ」
「あ……はい」
振り向けばそこには金髪の男性がいた。彼の緋色の射抜くような双眸に一瞬だけ胸が跳ねたが、大きな掌でゆっくりと撫でてもらっている内に自分の心が落ち着いていく。
5分後 ——。
ようやく気持ちが安定すると、グラスに入った水を渡されたのでそれをゆっくりと口にする。程よく冷たい液体が喉を通る感覚が心地よかった。
「おはよう、沢渡さん。気分はどうだ?」
「え、あの!何で私の名前……」
言いかけた所で、彼が下着1枚しか身にまとっていない事に気づく。すると、二日酔いで重だるい体に負荷が増した。
ああ、私やっちゃったんだ……酔いに任せた勢いで、ゆきずりの相手と一夜を……ってパターンだ。
はあ…と額に右手を当てながら深いため息をつく。
「すみません。煉獄さん……でしたっけ。私昨日かなり酔ってましたよね?」
「ああ!俺の事をなかなか離さなかったな」
「離さなかった…ですか?私があなたを?」
「うむ!!」
煉獄さんの笑顔が眩しい。きっと気持ちの切り替えが早いんだろうな。対照的に私は益々落ち込んでいく。