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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第46章 狐火の契約 / 🔥✳︎✳︎



「狛治、早朝からすまんな」

「別に……。いつもこの時間には鍛錬で起きてるから問題ない」

翌日の朝5時。俺は寝ている七瀬を背負って、人間界にやって来た。訪問先は素山家だ。

彼女を白い道着姿の狛治に預ける。
和室に敷かれた布団に寝かされた七瀬を確認したのち、すぐに戻ろうとした。

すると後ろから狛治に声をかけられた。
振り返ると、どこか納得がいっていない表情をしている。

「お前それでいいわけ?嫁入り合戦にも勝利しただろ?」

「構わん!もう決めた事だ!」


これは真実が半分、嘘が半分だ。
ずっとこの先も…自分の心の奥底にいるであろう七瀬。
そんな存在を己が手から手放すなど、なかなか割り切れる物ではないと言うのが正直な所だ。


しかしその思いは、自分の中だけでとどめておかねばならない。
そんな俺の様子に狛治は「なら良い」とまだ釈然としない様子だったが、どうやら気持ちを汲み取ってくれたようだ。


「それで……これからどうするんだ?」

「同じ妖狐の娘と婚姻をする!」

「おい、冗談だろ…」

「いや、冗談などではない!」

俺に出会った事、妖狐一族についての記憶は全て消したと改めて告げると、狛治はそれ以上言及して来る事はなかった。


「では行く!」

「あ、ちょっとこれだけ聞いても良いか?……お前さあ、涙って流した事あんの?」

「800年生きているが、一度もないな」

「そうか……」

「息災でな、狛治!」

「おう……お前もな」

右手を上げると、彼も同じように右手を上げて応えてくれた。


そうして俺は妖狐の世界に1人で帰った。










それから1時間後、七瀬は静かに目を覚ます。狛治が「朝食の用意をする」と言い、部屋を後にする。
彼女は静かに深く息をはいた。
じわっと涙が滲むが、すぐに左右の指で拭い去る。


「さようなら、杏寿郎さん」

彼女の呟きは誰に聞かれる事もなく、朝日の訪れと共に消えた。






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