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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第46章 狐火の契約 / 🔥✳︎✳︎



「好きと言う気持ちだけではどうにもならん事がある……まだ俺が十(とう)かそこらの時だ。よく晴れた満月の日、正に今夜のような晩だな。共に月見をしていた時にそんな事を言っていた」

「そう、ですか……」

父はそれから母と出会い、結婚をした時にこの言葉を思い出したそうだが ——


「今でもわからん。何故思い合っているのに、離れなければならない?瑠火を初めて見た時、何としても自分の伴侶にする。俺はそう強く思ったからな」

しかし…と父は目線を天井に向け、何かを思案するように両目を一度閉じた。そして開いた目で自分を真っ直ぐと射抜く。


「己の息子が、尊敬していたじいさんと同じ気持ちを味わっているのだと思うと……何だか置き去りにされたような気分だ」

「父上……そんな事はありません!俺に覚悟が定まらなかっただけです」


それから、互いに無言になる時が過ぎた。
襖がスッと開かれる。母が七瀬の準備が出来たようだと俺に告げて来た。


「失礼致します」
両親に頭を下げ、七瀬が待つ自室へと向かおうとすると ——
父に名前を呼ばれた。


「お前の人生だ。どんな決断をしても俺は構わないと思っている。しかし…こうと決めたのなら、何があっても最後まで貫きなさい」

「はい」と返事をした俺は、改めて決意を固めて和室を後にした。









「ん、杏寿郎さん?あれ、私どうしてたの?」

先程の父上との会話を思い出していた最中、布団に横になっていた七瀬がぱちっと目を開けた。
瞳の中の狐火が無くなっているのが視界に入る。
自分の心臓が大きく跳ねた。

動揺を悟られないよう、何でもないと言ったように振る舞う。
俺は上手く笑えているのだろうか。
内心不安になったが、目の前の彼女はそんな自分を見ても、特に疑問に感じる事はないようだ。

良かった。
さあ、ここからまた気合を入れねばな。


何故なら瞳の狐火を消したからと言っても、妖狐の嫁の資格が全て失われた事にはならないからだ。




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