恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第46章 狐火の契約 / 🔥✳︎✳︎
〜おまけ〜
「遅いですね、お2人……」
「そうですねぇ……槇寿郎さん?」
「…うむ、そうだな」
もうすぐ時刻が正午に差し掛かろうとしているが、杏寿郎と七瀬が居間にやって来る気配はない。
千寿郎が襖をちらちらと気にする様子を見せながら、両親に話しかけている。
座卓には人間界で売られている、即席カップうどんが10個置かれていた。
「油揚げがとても美味しく、お出しも東日本と西日本で違うのだとか……。俺は鰹も昆布も好きですが、父上と母上はどちらがお好みですか……ってあれ?お2人どうされました?」
自分の正面に座っている槇寿郎と瑠火の様子に、彼は違和感を覚えた。父を真っ直ぐ凝視している母、そして母の視線にどこか落ち着かない様子を見せる父。
息子はそれ以上問い詰めてはいけない空気を察すると「俺、お湯を沸かして来ます!」と慌てて部屋を退出していった。
「槇寿郎さんも翌朝、私を全く離してくれませんでしたよね?……何もかも初めてだったのに」
「む……面目ない……しかし、あの時の君があまりにもその……可愛らしくてだな」
「あら、今はそうではないと?」
「違う!そんな事は決してない!むしろ……」
『間違いなく今は入らない方が良いな……』
10分後、お湯の用意ができた千寿郎は和室の前で立ち止まっていた。襖をほんの少し開けた彼の目に映った風景。それは両親が仲良く寄り添う姿だった為だ。
『兄上も父上も幸せそうだ。俺も恋がしてみたい』
煉獄家の次男はそんな思いを胸に抱いていた。
この数日後 — 千寿郎は小狐姿で人間界に出向き、1人の少女と出会う。
煉獄千寿郎。
彼の恋もまた兄同様、ここから始まった。
〜幸せエンド 終わり〜