恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第46章 狐火の契約 / 🔥✳︎✳︎
「杏寿郎さん…だい、すき」
ほぼ全身とも言って良い。自分の物だ、と言うしるしを彼女につけ終わった瞬間、再び寝言が俺の耳に届く。
うむ、どうやら今度は小狐の俺ではないようだな。
自分に嫉妬をすると言うのも滑稽だが、七瀬の愛情は出来れば全て今の姿の俺に向いている物であってほしい。
瞼がようやく重くなって来た。華奢な体を隙間なく自分の体に密着させ、俺は彼女の頭頂部に頬を寄せて瞳を閉じた。
そして翌朝 ———
「ん……」
「起きたか」
七瀬の両頬を掌で包む。嬉しそうに笑う彼女に自分の表情も綻んだ。
「おはよう、七瀬。気分はどうだ?」
「おはよう……うん、あの、腰が凄く重いよ……。後お腹も…」
自分の腹部を数回撫でた右腕を布団から出した妻は、手の甲を見るなり「ひえ…」と驚いた声を出した。
「うむ!本能には抗えなくてだな!すまん!因みにそこだけではないぞ」
「ええ……」と更に驚いた声を出す七瀬は全身を慌てたように見回すと、顔を真っ赤に染めた。
「杏寿郎さん、私ね」
「なんだ?」
「昨日までこう言う事とは全く無縁だったの。だからその、刺激が…強すぎです」
頭頂部から湯気が出そうな七瀬がトン……と自分の胸に体を寄せる様が何とも可愛らしい。
「初日からこれだと、私どうなるのか本当に心配」
「む?俺は楽しみだが!ああ、そう言えばこれがまだだったな」
彼女の顎をくいっと掴み、淡く桃色に染まった唇にちう…と2度啄んだ後、強めにそこを吸った。
「今夜も明晩もたくさん愛らしい鳴き声を聞かせてくれ」
「〜〜〜!!」
パン、パンと両手で俺の肩を叩く手を瞬時に絡め、また口付けを七瀬に贈る。
妖狐の嫁になるこの儀式は、望月(もちづき)を含めた3日3晩続くのだ。
『良き子が生まれるであろう』
1年後、きっと俺と七瀬は本当に”夫婦”になる。そんな確信を信じて、愛する彼女との大切な時間を今日もこれからも過ごしていく。
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