恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第46章 狐火の契約 / 🔥✳︎✳︎
「故に自分でも予測がつかない部分がある。また怖がらせてしまうのではないか……それが今一番懸念している事だな」
「怖がるなんて…」
「初めて俺の本来の姿を見た時、怖いと思っただろう?戦いや情交時の妖狐は一言で言えば、獣だ。理性より本能の度合いが圧倒的に強いぞ」
確かに杏寿郎さんの本当の姿を見た私は、彼を怖いと思った。
いつも自分を優しく見てくれる眼差しは鋭く冷たく、狛治が放った式神も躊躇なく消失させた。
でも……。
「あの時も言ったけど、怖い以上に凄く綺麗だなあって思ったよ。小狐の姿も、今の姿も、本来の姿もみんな杏寿郎さんだもん。だから……そんなに心配しないで。気にかけてくれるのは嬉しいけどね!」
彼の左頬を自分の右手でそっとなぞると、大きな左手が重なった。
私より少しだけ高い体温だ。
「人間界はね、掌があたたかい人は心が冷たくて、その逆で掌が冷たい人は心があたたかい……なんて言われたりするんだけど」
「ほう、そうなのか」
うん、と頷いて言葉を続ける。
「杏寿郎さんは掌も心も、とってもあたたかいよ。だから、私大好き!」
「七瀬……ありがとう。本当に君と出会えて良かった」
それから啄むキスを交わした後、適温になった焼きいもを2人で食べて妖狐の世界に帰った。
——— けれど、実際はと言うと。
★
『どうしよう……覚悟を決めたのに、いざ当日になるとやっぱり少し怖い……』
それから3日後 ——
私は杏寿郎さんの部屋で彼をドキドキしながら待っていた。
20畳程の広さの和室の中央に1つの布団が敷かれていて、ヒノキのお香も焚いてある。
膝に置いた両掌には汗がやや滲んでいた。
その時、襖が静かに開く。彼がやって来たようだ。名前を呼ばれて声がした方に視線を向けると………
「えっ?どうしてその姿なの?」
そこに立っていたのは、小狐姿の杏寿郎さんだった。
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