恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第46章 狐火の契約 / 🔥✳︎✳︎
『やっぱりか……』
私は小さな彼を膝にのせ、後ろからぎゅっと抱きしめた。
「ごめん、その姿でそんなかわいい事言われるともうダメ。萌え死んじゃう」
「……」
“不甲斐なし” そんな声にならない声が聞こえて来るようだ。
「杏寿郎さんの妖力は強いから、きっとお願いすれば大抵の事は用意出来るんだろうな、とは思ってたんだけど……ちょっと驚かせてみたかったんだ」
ちう、といつも彼が自分にやってくれるように。
頭頂部に一回キスを落とした。顔を上げると、左右の三角形の耳が赤い。
「杏寿郎さん、本当にかわいい。ずっと小狐でいてほしいぐらいだよ」
“それは困る!”と彼が私に体を向けた瞬間、頬にちょんと狐の鼻が当たる。
目の前が眩しくなった。
それが収まった後に見えて来るのは、私を強い目力で見つめて来る杏寿郎さんだ。
「あの姿で君に愛でてもらうのも悪くはない……が、俺はやはりこうして愛らしい君に触れる方が好きだ!」
大きな手で左頬を包まれ、するりと撫でられるともう何も言えなくなる自分はつくづく弱いなあと思う。
「後3日だな……早く君を抱きたい」
「だきっ……??」
いきなり本能の塊のような発言が彼から飛び出し、ちょっと頭がついていかない。
「望月(もちづき=満月)が近いせいか、体の至る所が疼くんだ。今までは妖力で抑えていたが、今回はそれをしなくて良い」
「そう、なんだ……」
“妖力で抑えていた”
何だかとても聞き捨てならない言葉だ。