恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第46章 狐火の契約 / 🔥✳︎✳︎
「すまない、俺が君を見初めたばかりに」
「ううん、そんな事言わないで」
これは私の本心だ。
この人に会えて、彼を好きになって、そしてこれ以上ないと言うほど大切にして貰っている。
「だがな、七瀬。俺はこの長い長い妖狐の寿命を君と共に過ごし、色々な物を分かち合いたい。まだないが、仲違いするなどと言う事も……」
「えっ、やだよ。杏寿郎さんとケンカなんて」
私が焦ってくるっと体を彼の方に向けると「例えばの話だ」と頭を撫でながら諭してくれる杏寿郎さんだ。
例えでも嫌だと涙を滲ませる私を見て、愛い!とニコニコとしながら、左右の瞼に口付けも落としてくれる。
「しかし、そのような時間も大切にしたいと考えている。君と…生涯の伴侶になる七瀬とは些細な出来事さえも尊い物だからな!」
じわっと涙が両目に浮かんだ。するとまた「どうした?」と心配そうな表情を見せる彼。
「ごめんね、杏寿郎さんが凄く幸せな気分になるような事を言ってくれたから、つい涙が出ちゃった」
「大好きだよ」と告げれば、俺もだと答えてくれる彼。
いずれ両親や友人、会社で知り合った人達から自分の記憶を消されてしまうのは凄く悲しいけど、それさえも受け入れなきゃ。
そこまで自分に思わせてくれる、とてもとてもかけがえのない人。
「君には様々な事を犠牲にさせてしまってすまない。だが俺はこの命が燃え続ける限り、君をどこまでも愛し続ける!共に幸せになろう」
「杏寿郎さん……ありがとう」
彼がもうすぐ恋人から夫になる。
私は嬉しさと戸惑いと寂しさを同時に実感していた。