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恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)

第46章 狐火の契約 / 🔥✳︎✳︎



——— 彼との出会いは13年前まで遡る。


12歳だった私は夏祭りに一緒に来ていた両親とはぐれてしまった。
屋台を抜けた先にある神社に辿り着き、途方に暮れていた時の事。

神社の裏手側で狐の鳴き声が聞こえたので気になって行ってみると、そこには縄でその小さな体を縛られている小狐がいた。


不憫に思った私はその縄をほどくと、次の瞬間 ——自分の頬に小さな鼻先が触れた。すると先程と同じように眩しい光が放たれた。

その後…私の前に現れたのは、今目の前でこちらを強すぎる目力でじっと見ている杏寿郎さんだった。


「後1週間だな、君がようやく俺の妻になる。この日がどんなに待ち遠しかった事か……」

「うん、そうだね」

そう、私は大好きな杏寿郎さんのお嫁さんになる。けれど……


「どうした?七瀬、よもやこの婚姻に不満なのか?」

「ううん、違う!不満なんてないよ。私も杏寿郎さんのお嫁さんになれるのが凄く嬉しいし、光栄だなあって思う」

両手を胸の前で振り、精一杯の否定をすると、とても嬉しそうにする彼だ。

「妖狐になった1年後には、人間界からこっちの世界に移住しなきゃいけないでしょ?それはね、とても寂しいけど……結婚すれば女の人は誰もが通る道だから仕方ないって思えるの。でも……」

「記憶の事か……」

「うん」とゆっくりと頭を縦に振った私を、後ろから逞しい両腕が包んでくれる。それから右頬にぴたりと彼の左頬があてられた。

妖狐一族の寿命は人間の寿命よりずっとずっと長い。だから妖狐の嫁になる相手は、婚姻の際にその長い命を与えられる事になる。

ただし —— その対価として、婚姻を結んだ1年後には人間界を離れなければいけない。




更に、今まで自分に関わった人……両親はもちろん、友人の記憶から”私”と言う存在を完全に消す事が条件となっているのだ。





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