恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第46章 狐火の契約 / 🔥✳︎✳︎
「む?仮装こんてすと、か?」
「うん!来週はハロウィンでしょ?通ってた大学で文化祭があるんだけど…そのイベントとしてやるんだって」
私の膝上にこじんまりとのっているのは目力が強く、緋色の瞳をした小狐だ。小型犬のチワワと同じくらいの大きさをしている。
「熱心な後輩に誘われてね。先輩の彼氏さんは日本人離れしているから仮装がハマるんじゃないか…って事だったよ」
「ふむ!確かに俺は妖狐故に日本人ではない!そもそも人間ではないがな。素晴らしい見立てだ」
「ふふ、そうだね。でも杏寿郎さん……」
「ん?どうした、七瀬」
そしてこんなに愛らしく可愛らしい姿だけど、自分の恋人でもある。私の頬にちょんとくすぐったい感覚が訪れた瞬間 ——
目の前が全く見えなくなる程の眩しい光が現れる。
通常なら慌てふためく状況なのだけど、私の場合その時期はとうに過ぎている。
「……いつ見ても…その姿で話す…あなたは……」
「どうした、急に顔を赤くして」
私の左頬をそっと包んでくれる大きな掌。心臓が勢いよく跳ねる瞬間だ。これだけはいつまでたっても慣れない。
「う、うん……ギャップがあるよねって言おうと……してたんだけど」
「うむ」
顔の表面温度が少しずつ上がっていく。
自分の膝の上に乗せ、スルッと太い腕を私の腰に回す彼にドキドキとしている為だ。
「あの姿だと、君をここにのせる事が出来ないからな」
「んっ、」
唇にあたたかくて心地よい感触。彼が小さなキスを1つくれた。
視線の先には、綺麗な顔立ちの男の人がいる。頭には三角形の獣耳が2つ。
私が人生で初めて好きになった異性。彼は800年生きている妖狐で、人間ではない。