恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第45章 4年後の茜色へ / 🔥✳︎✳︎
スマホの停止ボタンをタップした彼は、自分のアラームを確認する。新規時刻として”8:00”と入力した。
再び杏寿郎は目を閉じ、すやすやと眠る恋人にまた腕を回した。
3時間後の8時丁度。スマホが再び震え出す。
布団の中から大きな掌がスッと出てきたかと思うと、スマホを手に取って停止ボタンをタップした。
『飛行機は羽田に12時だったな』
女の支度は時間がかかる。それを恋人の行動で把握している彼は、変わらず気持ち良さそうに寝ている彼女に声をかけた。
「七瀬…朝だぞ。起きよう」
「…………」
「七瀬」
「…………」
やや大きめの声をかけても、反応しない。杏寿郎は『仕方ないな』と昨夜の己の欲を少し振り返った後、ちょっとした悪戯を仕掛ける。
「七瀬……起きてくれ」
ツツと彼女の右の耳たぶを舌で愛撫し始めた。すると声を少し漏らしながら、七瀬が身をよじる。
「七瀬……朝だ」
「やん、くすぐった……んっ」
言葉は杏寿郎の口付けによって、飲み込まれた。啄む口付けを通り越し、ぬるりと彼女の口内が彼の舌で染まる。
歯列が上下共になぞり終わると、ようやく七瀬の双眸が開いた。
「おはよう、辛いだろうがそろそろ起きよう」
「おはようございます。本当に辛いです……」
「すまん」と謝る杏寿郎は、労うように恋人を抱きしめる。
「君と離れる前にもう一度繋がりたいが、我慢する!」
「杏寿郎さんって……本当に大正と変わらないですよね、体力」
自分は隊士時代と比べ、やはり体力は若干落ちたと思う。もちろん、体を動かす事は好きだけど。七瀬は目の前の恋人に今日もまた、尊敬の念を送った。
「朝食!一緒に作りましょう、杏寿郎さん」