恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第45章 4年後の茜色へ / 🔥✳︎✳︎
10分後 ——
2人は寝室へとやって来ていた。真っ暗な部屋を少しだけ明るくしているのは、セミダブルベッドのベッドボードに備えつけられているリーディングライトだ。
七瀬はひとしきり泣いて気持ちが落ち着いたようだが、杏寿郎には変わらずぴったりとくっついたままである。そんな彼女をリビングにいた時と同じように、彼は後ろから包み込んでいる。
「………」
「………」
会話は始まらない。しかし、言葉が発せられる前に七瀬のうなじに小さな口付けがそっと落ちた。
触れるだけのごくごくわずかな物だが、これに彼女が反応を見せる。
「そこじゃ……なくて」
「どうした?」
包まれている体を捩り、七瀬は杏寿郎と向き合った。瞬きが多くなる。しかし、きちんと伝えなくては。
彼女は勇気を出して、口を開いた。
「ここが、良い……」
トントン、と七瀬が右人差し指で示したのは桃色に色づいている唇だ。
その仕草に気をよくした杏寿郎はフッと笑い、ちう……とうなじに落とした物と同じ小さな雫を降らす。
“もっと…”
自分を求める恋人の欲望を汲み取り、催促の言葉ごと口付けで飲み込んだ。互いの唇を啄みながら、衣服を1枚1枚取り払う。
すると段々と肌が空気に触れて、暴かれていく。
2人の体は大正時代とは違い、目立つ傷痕はない。令和の世でも鬼の出現はなくはないのだが、数が絶対的に少ない為だ。
「嬉しいな、また着てくれたのか」
互いに身につけている物が下着のみになる。すると、唇同士でのやりとりが止まる。
杏寿郎が七瀬のセットアップを見て、両方の目を細めていた。色は黒で、生地は大人っぽいレース素材だ。
「だって……今日が終わったら、しばらく会えなくなるから。杏寿郎さんが良いなって言ってくれたこれにしようって思ったんです」