恋はどこからやって来る?/ 鬼滅の刃(短編・中編)
第45章 4年後の茜色へ / 🔥✳︎✳︎
「父にはもう体の繋がりがあると言うのは……内緒にしています。でもこうして杏寿郎さんの家に来てるから、バレていると思いますけどね。
「むっ……!」
コソコソと真実を告げる七瀬に、杏寿郎は思わず吹き出してしまいそうになった。
「私、本当に思うんです。大正時代はそのあたり自由だったなあって。令和は色々気遣いしなきゃいけない事が多すぎます」
「……七瀬」
「はい」
杏寿郎は彼女の左頬を自分の右手でそっと包むと、柔らかく撫でる。
「すまん、今更ながら背徳感のような気持ちが湧き上がって来た」
「大丈夫です。父は前世で私より先に亡くなったでしょう?だから今世では娘の恋愛事としっかり向き合うと決めたそうですよ」
「そうか……」
しかし ——— 瞼を伏せた杏寿郎の脳内には常識と言う名の理性が端から端までよぎる。
「杏寿郎さん」
彼の首に七瀬の華奢な両腕が回り、2人の距離がぐっと近づいた。
「もう私とあなたは生徒でもないし、先生でもありません。だから……」
「うむ」
緋色の双眸と焦茶色の双眸が互いを捉えた瞬間、2人の唇がゆっくりと重なる。啄むだけの軽めの口付けだった。
お互いの息が重なる距離で、七瀬は言葉を続ける。
「ここから普通の恋人同士としての時間を始めていきませんか」
「普通…か?」
はい……と頷く年下の恋人をその胸に抱き寄せる杏寿郎。
「今日ね、杏寿郎さんと手を繋いで一緒に歩けた事……私本当に嬉しかったんです。転生して記憶を取り戻す前に、あなたとお付き合い出来る事になって……幸せだなあって思ってました」
七瀬は自分の両腕を回した。恋人の背中に。